CAE受託解析 (代表的な解析実績:幾何学的非線形問題)
1.薄肉円筒の軸圧縮座屈
円筒の軸圧縮による弾性座屈問題は、シェルの座屈の基本的な問題として位置づけられ、古い時期から多くの研究が行われてきました。Karmanらによる先駆的な理論、八巻らによる広範な実験から、この問題では圧縮の進行にともなって円周方向の波数が漸減しながら連続的な飛び移り座屈を生じることが示されています。Abaqus/StandardおよびAbaqus/Explicitを用いて解析し、八巻らの実験を良好にトレースする結果が得られることを確認しました。
- 参考文献:
- T.Kobayashi and T.Ogasawara,Post-buckling Analyses of Elastic Circular Cylindrical Shells under Axial Compression,ASME Pressure Vessels and Piping Conference,71532, 2005. (ASME,Certificate of Appreciation for the Outstanding Computer Technology Technical Paper,PVP2005受賞)
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東北大・八巻らによる実験 |
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波数減少をともなう荷重・変位関係 |
2.薄肉円筒の弾塑性せん断座屈
薄肉円筒のせん断による座屈問題は、タンクの耐震性向上などの観点から重要な課題です。
本例はステンレススチール製の円筒について実施された実験をトレースした結果を示します。
円筒の高さが低い場合は壁面のせん断、また高い場合には曲げの効果を伴った基部の屈服による座屈を示すことがわかります。
- 参考文献:
- 松浦ほか,高速増殖炉容器の耐震座屈設計法に関する研究(第2報),日本機械学会論文集,A編,60-575,p.212,1994.
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H/R=1.5 |
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H/R=3 |
3.外圧を受ける扁平球形シェルの座屈
この問題はシェルの代表的な座屈問題の一つですが、非対称の座屈モードの発生に関連して知見が錯綜した課題と言われています。
ここでは、最も信頼できる結果として山田らによる減少剛性理論による解を参照し、Abaqus/Standardよりトレースした結果を示します。
汎用FEMに用意されている増分解法では、分岐経路に解を誘導することはできませんが、代替として初期不整を慎重に与え、細かい増分ステップを用いた弧長法により、山田らが示した分岐経路を再現しました。
- 参考文献:
- 日本機械学会編,シェルの振動と座屈ハンドブック,技報堂,p.297,2003.
4.外圧を受ける扁平球形シェルのクリープ座屈
この問題は代表的な非弾性座屈の問題です。
樹脂製の部分球殻に外圧を与え放置すると、時間の経過と共にクリープひずみが進行し、限界を超えると飛び移り座屈を生じて、形状が反転します。
非弾性解析手法の開発初期に手がけられた問題ですが、最近では汎用FEMを用いて比較的容易に解析することが可能です。
ただしこの種の問題は、境界条件や形状不整に対して極めて鋭敏であるため、実験との厳密な整合をとるのは難しいことが指摘されています。
本例では、過去に行われた解析と同等の解が得られましたが、実験とは相対的な傾向を説明し得る結果となっています。
- 参考文献:
- 矢川,宮崎,有限要素法による熱応力・クリープ・熱伝導解析,サイエンス社, 1985.
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参考文献にある解析および事件に関する知見 |
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Abaqusによる解析結果 |
5.ゴムひものねじり
模型飛行機などに見られるゴムひものねじりを解析した例題です。
ねじり変形を伴い、変形は純せん断の問題であるので、微小ひずみの範囲では軸方向に伸びません。
しかし、ねじり量が大きくなると、経線(外表面の軸方向に想定した直線)はらせんを描かなければならず、ひもの断面が収縮する結果、ゴムの非圧縮性を満たすように軸方向には伸びを生じます。
本例ではひもの両端を軸方向に固定しているため、ねじりに伴って軸方向には圧縮を生じます。
ひもは柔軟であるためにこの圧縮を支えることはできず、即座に軸直交方向の変位(座屈)を生じて圧縮から逃れようとします。
このたわみ変形を生じた状態でさらにねじりを受けるため、ひもは団子状の2次的な変形を生じ、見慣れた挙動となります。