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ゴムをはじめとした高分子材料は,タイヤ,ゴムブッシュ,防振装置など広い分野に応用されている.Mullins効果,粘性,ハードニング等に代表される複雑な力学特性を有するものの,実務における数値計算での性能予測では,ゴムの構成則の複雑さから,最も単純な超弾性体が主として利用されている.
ここでは特定非営利活動法人非線形CAE協会において開発されてきた超弾性・粘弾性ダメージモデルのユーザーサブルーチンライブラリUMMDrの知見(第24回計算工学講演会,2019年5月,大宮)を踏まえ,その実用性について検証した結果を報告する.
近年,3Dプリンターによる造形が一般的になりつつあるが,その強度に関する精確な情報を知るためには,積層をともなう溶解・凝固の過程の把握が必須である. しかし造形後の可視化観察によって推測することは可能であっても,造形中の情報を取得することは容易ではない.
本講演では,造形過程を数値シミュレーションにより再現し,定性的な範囲ではあるが,その過程を明らかにした.
なお本テーマは,名古屋大学殿との共同研究の成果である.
自動車の衝突など,衝撃による動的破壊の分野では,材料の速度依存性もさることながら,破壊現象そのものに対する動的な効果の考慮が必要である. 特に,脆性的な不安定き裂進展の課題は,実験的な難しさにも阻まれ,定量的な評価が立ち遅れている分野でもある.
本研究では,車体に広く用いられる超ハイテン材を対象に,実用面の観点から最新のAbaqusを用いて動的な不安定き裂進展解析を実施し,成果や今後の課題について報告する.
なお本テーマは,本田技術研究所殿,東北大学殿,慶應義塾大学殿との共同研究の成果である.
弊社は1994年の設立以来,超弾性・粘弾性材料の実用的な解析手法の確立を主要な業務の一つとして取り上げてきた. 2軸試験機による超弾性計測とカーブフィット,非共振型粘弾性計測器による計測とカーブフィットに関する技術の提供は,その代表的な成果である. 昨年リリースした粘弾性同定ソフトウェアでは,WLF式やアレニウス式では表現できない複雑な時間-温度換算則を持つ材料に対応可能とさせるなど,先端的な材料への対応を進めている.
今回は過去10年ほどにわたって蓄積してきた超弾性・粘弾性材料の計測と解析の実際を,ケーススタディとして解説する.
計算力学分野における主要な国際ジャーナルや国際会議における動向の調査結果を踏まえ,非線形計算力学分野における現状のトレンドや課題を整理し,今後の方向性について議論する.
例えば,マルチスケール,マルチフィジックス解析などの理論と解析技術はかなり成熟してきており,一部汎用化も進められているものの,解決されてない問題も多い.
また,損傷やき裂進展解析も,最も古い非線形CAE分野の一つであるにも関わらず,実務で求められるレベルの表現性能には達していない.
一方で,ある程度の精度で解析できるようになった非線形CAE技術であっても,それらの利用にあたっては,対応する物理現象の知識やソフトウェアの習熟度に対する要求が高くなる傾向にあり,浸透しているとは言い難い.
講演では,これらの現状を俯瞰し,我々の立ち位置や向かうべき方向性を議論したい.